「ファストトラッキング」でプロジェクト遅延は問題なく解消できるのか?

プロジェクトを運営していると必ずぶつかる問題が「スケジュール遅延」。この問題解決に関してはPMP(PMBOK)の中でも言及されています。

ここでは、プロジェクト遅延対策として有名かつ普遍的な「ファストトラッキング」について紹介します。




ファストトラッキングとは?

ファストトラッキングは、「クラッシング」と並んでスケジュール遅延対策として推奨されるタスク調整法で、PMBOKにも記載されています。

プロジェクトのキックオフ段階では、ガントチャートを使用して「タスクの依存関係」「スケジュール(時間軸)」を関係者で共有しますが、プロジェクト遅延が発生する要因は、クリティカルパスのタスクの遅れが原因です。

ファストトラッキングでは、コスト(人・お金)を掛けずに、既存のリソースだけを用いて「タスクの依存関係」を調整することで、スケジュール遅延の改善を図ります。

ファストトラッキングとクラッシングの大きな違い

ファストトラッキングとクラッシングの大きな違いは2つあります。

  • ファストトラッキングは基本的にコストをかけない
  • ファストトラッキングは複数のタスクを調整する(=リスクも高い)

ファストトラッキングとクラッシングの違いは、図を見ると一発でわかります。(いずれ清書します)

ファストトラッキングはタスクの依存・相関関係を調整するスケジュール遅延対策法であり、例えば「終了→開始」タスクを「並行タスク」に変更するという方法が一般的です。

クラッシングは遅れているクリティカルパス上のタスク自体を短縮するという考え方で、タスク時間を短縮するために「人的コスト」「ハード・ソフトのコスト」を掛けるという方法なのです。




ファストトラッキングの最大のリスク

ファストトラッキングはコストを掛けない対策であることから、まず最初に検討されるプロジェクト遅延対策手法です。ただ、もともとのタスクの相関・依存関係を崩すことになるので、同時に行う作業量が増えて作業内容も複雑化します。

メンバーの技量はもちろん、お互いの連携(人間関係)が悪いとタスクの精度(=完成物の品質)が落ちる可能性があります。プロジェクトリーダーは情報共有による状況把握に、今まで以上に注意しなければいけません。

ファストトラッキングを実施する前に確認する事

ファストトラッキングを進めるにあたって、クラッシングと同様に事前に注意すべき項目があります。

【1】そのタスクはクリティカルパス上のタスクか?

これはクラッシングと同様に、スケジュール遅延対策で最初に確認しなければいけない事項です。

クリティカルパスは「余裕時間(=フロート)がゼロ」のタスクのつながりであるため、クリティカルパス上のタスクの遅れはそのままプロジェクト全体の遅れに直結します。

そのため、ファストトラッキングを行うタスクが「クリティカルタスク」であることが重要です。他のタスクは余裕時間(=フロート)があるので、優先度は低いのです。

プロジェクトが進むとクリティカルタスクが変わる?

プロジェクトでは、クリティカルパスは1つとは限りません。プロジェクト開始の段階で、複数のクリティカルパスがあることは想像しやすいのではないでしょうか。

プロジェクト開始段階でクリティカルパスが1つであっても、「準クリティカルパス」に該当するタスクが、遅れによって「クリティカルパス」になることもあります。プロジェクトリーダーは、CPMの段階で「準クリティカルパス」の存在にも注意を払いましょう。

【2】タスクの相関関係の変更による他のタスクへの影響を確認する

ファストトラッキングはタスクの依存関係を変更するので、プロジェクト当初の予定よりタスク関係が複雑になります。

とくに人的負担が大きくなるため、クリティカルパス以外のタスクへの影響も考えて組み直さなければいけません。




【3】並行タスクをこなせるだけの人的余裕(技量、精神面)があるか?

ファストトラッキングによって並行タスクが発生した場合、該当のタスクの担当者の処理能力は重要なポイントです。マルチタスクを行えるだけの技量や精神的な余裕があるかを、ファストトラッキングを行う前に確認しなければいけません。

プロジェクトマネジメントでは人を工数という「数値」で考えてしまう人が多いですが、人間関係も非常に重要です。もしも1人が精神的に追い詰められて休んでしまえば、遅延はさらに拡大します。

ファストトラッキングは担当者に負担が掛かりやすいので、精神面のケアにも注力しましょう。

【4】クラッシングとの併用は必要ないか確認する

ファストトラッキングだけでは、スケジュールの遅延が解消できないことが多々あります。ファストトラッキングをやってダメだったからといって、すぐにクラッシングを行うということでは時間の浪費です。

プロジェクト遅延の対策ミーティングの場では、いくつかの対策案を準備した上で最もリスクが抑えられる方法を議論して決定しましょう。

まとめ:ファストトラッキングの活用

ファストトラッキングについて説明してきましたがいかがだったでしょうか。ファストトラッキングのポイントは以下の通りです。

  • クリティカルパス上のタスクに適用することが前提
  • 既存のタスクの依存関係を調整して行うためコストはかからない
  • ファストトラッキングは担当者の能力に左右される
  • タスク担当者の精神面のケアやチームワークの醸成が必要
  • クラッシングとの併用が必要ないか最初に検討する

プロジェクトは基本的には当初の予定通りには進みません。スケジュール遅延に対する対策として代表的なクラッシングとファストトラッキングですが、これはどのような業界・業種であっても日常的に行っている対策方法です。

いずれの対策においても、基本的には担当者への負担が増えます。せっかく決めた対策でも、誰かがいなくなれば補填にさらなる負荷がかかります。

スケジュール遅延の要因は技術力や資金だけではありません。相互の人間関係に問題はないかなど、プロジェクト当初のチームマネジメントも重要なスケジュール遅延対策であることを忘れないでください。