進捗管理なきプロジェクトは失敗に終わる【イナズマ線、二重線の実施例】

プロジェクトの一連の流れは以下の図のようになっています。プロジェクトの計画を建てて、実行していくには「ガントチャート」の作成をオススメしています。

この「進捗フォロー」編では、ガントチャートで組んだスケジュール実行時の進捗管理方法について紹介します。

進捗管理においては、実に様々な分析方法があります。

  • イナズマ線
  • B-C-F分析
  • 二重線
  • マイルストーン予測図
  • スリップ・チャート
  • バッファーチャート

など、これら全てを正確に把握してうまく使いこなしている人は限られているでしょうし、大規模で綿密なプロジェクトでない限りは全てを使用する必要はありません。

ここでは、とくに活用しやすい「二重線法」「イナズマ線」の使用法や、スケジュールの遅れを取り戻すために取り組むべき対処法について説明します。





タスクの遅延を見つけ、プロジェクトを遅らせないための「進捗フォロー」

プロジェクト計画時にガントチャートを作成した後は、スケジュール通りに進んでいるかどうか「進捗フォロー」する必要があります。

この進捗フォローをしっかり実行するか否かで、プロジェクトが予定通りに進行し期限内に終了するかを決定づけるため非常に重要な作業になります。

進捗管理は、プロジェクトが進行し始めてから定期的に行う必要があり、チェックする項目としては以下のようなものがあります。

  • プロジェクト全体の進捗状況はどうか
  • タスクが遅れているような箇所はあるか
  • フロート(余裕時間)のトータルは残りどれくらいか
  • クリティカルパスに遅れや問題点は発生しているか
  • 工程の進捗状況によりクリティカルパスが変わらないか

とくに重要なのはクリティカルパスの進捗チェックであり、クリティカルパスの遅れはプロジェクト全体の遅れに直結するのです。

ただし、進捗チェックの段階で問題があるとわかった場合でも、すぐに闇雲に対策を行うことはせずに「どれほど致命的な遅れ」で「他の作業への影響がないか」を確認する必要があります。

例えば、「他のタスクのフロート(余裕時間)を消費してしまい、余剰戦力を回せなくなるほどのものなのか?」といったような事です。

状況確認を行った上での対策でなければ、その場はいいとしても、その後のタスク実行において遅延や思わぬ問題の発生などに繋がる場合があります。

遅れている=すぐに対策する

というような、安直な考えは持たないようにしましょう。




プロジェクトの進捗管理時に使用する2つの分析手法

前述のように進捗管理には様々な手法があります。せっかくガントチャートでスケジュールを組んだとしても、進捗度がわかるようにしていかなければ活用できているとは言えません。

ここでは、基本的ながらも効果が絶大な進捗管理方法を、実例をもとに紹介します。例として、下のようなプロジェクトタスクの進捗を「見える化」していきましょう。

タスクシートをもとに、ガントチャートを作成したものが以下になります。

このケースでのクリティカルパスは、赤線で結んだ部分で設定することとします。

タスク110→タスク210→タスク230→タスク320→タスク330

それでは、このガントチャートをもとに、進捗管理の方法を説明します。




進捗実績管理ツール1:「二重線」

「二重線法」は最もオーソドックスな進捗管理方法で、「予定」と「実績」の2種類のバーをチャート上で使用します。

「実績」の入力に際しては、実際に作業に取り掛かったタイミングからの進捗を記載します。「進捗管理日」の時点で予定より遅れているタスクがある場合には、そのタスクの終了予定日まで線を引く必要があります。

実際に進捗を記入したものが以下のガントチャートになります。

二重線は各タスクの実績を見るという点では優れていますが、一目で全体の状況を確認するには若干わかりにくいという点があります。

実際に「二重線法」で先ほどのスケジュールの進捗を確認してみましょう。今回の進捗管理において、注目すべきタスクは、「タスク230」「タスク310」「タスク410」になります。

遅れている2つのタスクの把握

進捗管理の日にちは17日となっていますが、その段階で遅れているタスクが「タスク230」「タスク410」の2つのタスクです。

「タスク230」は、約半日ほど開始日が予定より遅れています。完了予定を示す緑色の線に着目すると、当初設定した完了予定日より約半日ほど遅れているのがわかります。

同じように、「タスク410」は予定より開始日が2日程度遅れています。この「タスク410」はクリティカルパスに乗っているタスクではないため、全体の進行に関しては大きな影響はないように考えられます。

ただ、遅れている「タスク230」はクリティカルパスに乗っているため、こういった重要なタスクの遅れの支援を行う余力が無くなってしまうといったリスクも秘めています。

先行しているタスクの把握

これらのタスクに対し、この段階で進んでいるのが「タスク310」です。予定では1/18から取り掛かる予定のタスクでしたが、1/17の段階で既に取り掛かりが始まっているばかりか、半分以上が完了という状況です。

このタスクもクリティカルパスには乗っていませんが、こういった先行作業があるおかげで、他のタスクの遅れを取り返せる可能性も出てきます。

「二重線法」のいいところは、こういった「進んでいる」「遅れている」タスクが進捗管理日を境として一目でわかるというところです。




進捗実績管理ツール2:「イナズマ線」

「イナズマ線」は、スケジュールのタスク全体の進み具合,遅れ具合が一目でわかる分析ツールです。「二重線法」とは違い、チャート上のタイムバーをそのまま進捗管理に利用して「進捗度」分だけ色を変えることで進捗状況を示します。

「進捗度」に関しては、「各タスク工程の中で何%終わっているか」という観点で入力していきます。

進捗が無いタスクに該当するバーチャートの部分は、何も色を塗らない状態としておきます。この状態が「進捗率ゼロ%」です。

それ以降、タスクがある程度進捗していくごとに「全体のうちの何%が終了しているか?」という視点で随時バーチャートの部分を色づけしていきます。この時の色は何色でも構いません。

タスクが完了した時点で「進捗率100%」として、バーチャートを全て色塗りします。この時、塗り潰す色を他のものと変えてタスクが終了していることが一目でわかるようにしましょう。

イナヅマ線をガントチャートに引く

バーチャートの色づけが終われば、いよいよ「イナズマ線」による進捗管理の開始となります。

イナズマ線を記入する際には、「進捗管理日」を中間地点として以下のようなものに線を引きます。

  • 「進捗度」が”進捗管理日以前”において、100%に到達していないもの
  • 「進捗度」が”進捗管理日以降”において、0%を超えるもの

実際に、事例のタスクに関してイナズマ線を引いたものが以下のようになります。

「イナズマ線」によるタスクの進捗度判断の方法は、以下のようになります。

  • イナズマ線が左側に伸びている:完了せずに遅れているタスク
  • イナズマ線の右側に伸びている:先行しているタスク

つまり、進捗管理日から「イナズマ線」が左側に伸びているタスクは、現時点で遅れているタスク。右側に突き出している箇所のタスクは、予定より進んでいるタスクとなります。

この後に、左側にある“遅れているタスク”に着目して「遅れを取り戻す施策」を施したり「リスケジュールを行う」などの対処をしていきます。

着手日が分かりにくい点をフォローする

イナズマ線は直接タイムバー上で”進捗度”を記入するため、「開始日」が遅れたタスクが「いつ着手したかわからない」という欠点があります。この点はフォローできるように「注釈」などを加えましょう。

ガントチャートを作成するソフトのほとんどが「進捗度をタイムバー上で記入」するパターンが多いため、イナズマ線を活用することが多くなります。

イナズマ線の分析ができるツールもさまざまで、「microsoft project」はもちろん分析を行うことができます。




進捗分析法からわかるプロジェクトの進捗状況と対策

2つのプロジェクト進捗分析方法を紹介しましたが、実際にこのプロジェクトはどういう状況なのか考察してみましょう。

このプロジェクトは「タスク330」の完了を持って終結します。現時点で1/17までの進捗となっていますが、こう言った状況下でこのプロジェクトは無事に終わるように見えるでしょうか?

残りのタスクは「タスク230〜330」までが残っており、「タスク330」は「タスク320」が終了することで実行できる「終了ー開始」の依存関係にあります。

しかし、よく見てみるとクリティカルパスに乗っている「タスク230」が作業開始日が遅れているため、終了予定日が半日ほど遅れています。このままの流れでプロジェクトを進めると確実に遅れが生じるため「タスク230」の遅延に対処する施策が必要となります。

このように、途中の遅れや先行があった場合に、その後のタスクの「作業時間」「他のタスクとの依存度」に着目し、力を入れるべきタスクを明確にしていくことが「進捗フォロー」では重要となります。




プロジェクトの”遅れ”を解消するためにやるべきこと

スケジュールの遅れを取り戻すためには、大きく2つの方法があります。

多くの人は、以下の対策のうちのいずれかを感覚的とはいえ実施しているでしょう。ただ、それぞれの対策に関して以下のことを把握しておく必要があります。

  • どのようなものなのか
  • どういった影響を与えるのか
  • コストとして何が必要になるのか
  • どういった点に注意するべきか

また、これらの対策はクリティカルパスに対して優先的に行うということを意識してください。これを意識するだけでも、今までの感覚的な対応から脱却することができます。




ファストトラッキング:ネットワーク図を変更する

ガントチャートにおける作業の依存関係を調整し、追加のコストなどをかけることなく、スケジュールを調整する方法を「ファストトラッキング(Fast Tracking)」と呼びます。

具体的な修正方法としては、以下のようなものがあります。

【対策例1】並行作業

「終了ー開始型」の依存関係にあるタスクで、先行作業がある程度終了していれば次の作業に移れるような場合は、そのポイントから作業を並行して行う。

【対策例2】前後関係の組み直し

タスクの前後関係を組み直し、実施する順番を変える。連続でつながっていたタスクを並列化し、並行作業を行う。

【対策例3】タスク細分化

タスクをさらに細分化し、並行してタスクを進行させる。




クラッシング:コストをかけて短縮する

人員の追加や、外注化、新技術(ソフトなど)の導入など、ある程度の人的・金銭的コストをかけて、遅延を改善する方法を「クラッシング(Crashing)」と呼びます。
具体的な対策例としては、以下のようなものが挙げられます。

【対策例1:人員的コスト移動】

フロート(余裕時間)があるタスクから、クリティカルパスのタスクに対して人的要員を移す。

【対策例2:金銭的コスト】

残業や時間外勤務、人的要員の増加措置や、外注への業務委託を行う。




リスクに対するマネジメントも忘れずに行う

いずれのプロジェクト遅延対策に関しても、それに伴うリスクが必ずあります。

  • タスクを別の人に任せる際に、その人のレベルは適正か
  • タスクの順序を変えた時に、他のタスクへの影響はないか
  • 金銭的コストはプロジェクト予算に対して許容範囲か

こういったリスクが発生しない、もしくは発生した時に対処できるように事前にリスクマネジメントを行っておく事は重要です。リスクマネジメントは、プロジェクトの完遂に必須の作業です。これについては別記事で説明します。

まとめ

プロジェクトの進捗管理というと、どうしても最初に作成した計画表を元に「遅れはないのか?」「○は終わったか?」などの口頭確認がメインとなってしまいがちです。

計画表自体がわかりやすくなっていないと目も当てられませんが、進捗も一目でわかるような工夫は必要です。今回紹介した「二重線法」や「イナズマ線」といったものは可視化が容易で使いやすいツールです。

プロジェクトの成否は進捗管理に掛かっているということを念頭に、どちらか片方でもいいのでトライしてみてはいかがでしょうか?